共有名義不動産の「持分」を売却する方法

売却方法によるメリットとデメリット、誰に相談するかが重要です

共有不動産(共有名義の持分権)を売却する時の基本は3方法です。売却方法により一長一短(メリット・デメリット)があります。共有者間の交流状況や、共有者の生活環境・経済状況・将来の生活設計などを考慮して売却方法を判断する必要があります。

共有名義の「持分権」の売却は “3方法が基本” です

共有名義不動産の持分を売却(売買)する場合、もしくは土地の分割をするには、まずは共有持分の名義人同士で売却(売買)や分割等に向けた意思の統一を図ることが何より優先です。以下、実務者として記してみます。

共有名義の持分は、単独では すべての不動産の売却や土地の形質変更・新築の建替えなどはできません。また、共有状態のまま放置しておけば、共有権利者の死去により、相続人が細分化することが考えられ、遺産分割協議・相続登記の複雑化とトラブル等が増えることも考えられます。

共有者間で売却等の協議が進まない場合では、裁判所に委ねて、調停・訴訟・不動産競売等に進めることができますが、後々において親族間に感情のシコリが残ることがあります。競売になれば 落札価格(買われる価格)は極端に安くなり、共有持分者への売却配当金はより少額になりますからメリットはありません。不動産競売になって得をするのは、低額で買受ける落札人だけなのです。

共有の持分者は、お早いうちに売却・土地の分割等の協議を行い、共有の解消を図ることが先々のために望ましいことと考えます。

1.共有者の間で売買する方法

自己の共有持分を他の共有者に売却するのです。自己の持分を売却することは
本人の自由ですので何らの障害もありません。買う共有者以外の他の共有者から
の合意も必要なく売却できます。

● メリット
共有者の誰かが居住している場合などで、その居住者が買受けを希望する場
合では、資金調達が可能であれば円滑に進むことが多いです。
● デメリット
親族間の持分・名義売買であり、過去からの交流や経緯などで円滑に進まない場合や、売買価格等について折り合いが難しいこともあり得ます。

2.自己所有の共有持分だけを第3者に売却する方法

自己の共有持分を、共有者以外の第3者(個人・法人)に売却する方法です。自己の持分を売却することは本人の自由です。但し、第3者に売却するということは、元々の共有者の中に外部から新しい共有者が入るのですから、残された共有者には将来に向けての不安などが残ることが考えられます。尚、第三者の買受者からすれば、自由に利用できない制約のある共有不動産を買うのですから買受ける価格は低廉なものになるでしょう。

共有名義の持分を、第3者が買うということは、勿論のこと利益のためです。共有の持分権を買い取って、その後に 他の共有者に利益を上乗せして転売をするか、逆に共有者の持分権の買取りを迫るか、もしくは 共同で新たな第三者に同時売却をして利益を上げることなどが目的です。

●メリット
自己の持分を売却するのであり何らの障害もありません。
●デメリット
持分権という制約のある不動産ですので売買価格は安くなります。

3.共有者全員で第三者に売却する方法

共有者全員が一丸になって、各々の名義・持分を第三者に同時一括で売却する方法です。買う側からすれば、各々の持分権を同時に買うのですから、制約のない一括の所有権になるために、所有権の相場価格で売買することができます。

● メリット 
所有権の相場価格で売れます。安値売却にはなりません。共有者全員の合意の上で同時一括売却をするのであり、後の親族関の交流のためにも良い方法です。
● デメリット
共有者全員で売却に向けた意思の統一を図るためには、誰かが中心になって共有者間の意見を一本にまとめ上げる調整が必要です。代理人を立てるケースが多いです。

自己の持分だけを売却するのであれば何ら問題なく単独で売却できますが、共有不動産の全部を第三者に売却する場合では、共有者全員の売却の意思統一が必要であり、共有者のうちの一人でも売却に向けて反対者がいれば売ることはできません。

ここで重要なことは、共有者全員が一体の売主になる場合、売買契約後に共有者の一人が「売るのをやめた」となれば契約の不履行になり、共有者全員に違約金などが発生しますので、売却に向けての堅固な意思統一が欠かせません。

上記 1.2.3.の方法で売却が進められない場合は、裁判所に委ねることに なります。調停、共有物分割請求訴訟で売却等に向けて進められますが、和解ができなければ 最後は共有不動産の競売となります。

競売による売却とは、調停・共有物分割訴訟について

共有する土地建物の売却等に向けて、共有者間で協議が進まない場合では、最後は裁判所の調停(裁判官と調停委員を交えての話合い)や、共有物分割訴訟に進める方法があります。裁判所は、過去からの経緯、共有者の生活環境・経済状況、土地建物の現況などを総合的に勘案して合理的かつ現実的な解決策を出しますが、和解にならなければ裁判所の強制的な売却である競売に進むこともあり得ます。

競売とは、裁判所が売主の立場になって強制的に公開売却をして、売却金から経費等を差し引きして共有権利者に配分することです。競売になれば、競落価格は安くなります。買受け者は、後々の諸問題の整理(居住者などの明渡し等)があるので安くなければ競落しないのです。

裁判所は、競売をするための進行段階で不動産の詳細調査と売却価格の算定のために土地建物に入場します。居住中の建物内にも通知の上で半強制的に入り調査をします。これは拒否できません。また、競売開始になれば、その競売情報を見た競落希望者が、現地調査や買受け後の明渡し交渉をするために現地に直接に来て騒がしくなることもあり得ます。

共有不動産の分割とは

共有する土地の分割とは、一例ですが、共有者のうちの誰かが居住しており(例えば長男様)、共有土地・建物の売却には反対で、今後も住み続けたいというケースです。

このような場合は 可能であれば共有地を分割(分筆)して、そのうちの一区画を住み続けたい共有者に土地・建物ともに単独所有権にして譲るのです。そして、残された土地を第三者に売却する方法などです。勿論のことですが、建物をすべて解体更地にして、土地を分割(分筆)して、各々の単独所有権にすることもできます。その後に、各々が売却することも自由です。但し、既存の建物の位置や土地を分割(分筆)した場合で、残された土地の地形などが著しく悪くなる場合は難しい方法です。

共有地の分割は、共有名義の持分割合に準じて土地の大きさを区割りするのが基本ですが、話合いで土地の増減や境界線の位置の調整を金銭の清算で行うことも可能です。尚、角地と一面道路に接する土地では価値が異なりますので、資産評価も考慮する必要が生じます。土地の分割は共有不動産の解消策として有効な方法です。

尚、土地の分割をする場合、行政指導による最低敷地面積以下ですと建築確認(建築の許可のようなもの)が受理されないことがありますので注意が必要です。

売却に向けて、親族間の考え方がまとまらないケース

共有者間で売買等に向けての意思統一できないケースで多いのは、共有者のうちの誰かがその不動産に居住している場合や、事業用として使用している場合などです。長男様や長女様が居住しているケースが多いのですが、居住している共有者からすれば、愛着があり、離れたくない気持ちが強いのです。

ですが… 共有の土地建物は共有者全員の財産であり、居住する共有者が将来に向けても住み続けたい、利用し続けたいと主張しても、それは他の共有者の財産・権利を損うことになるのですから無理な要望なのです。買って頂くことが理想ですが、資金調達ができなければ諦めて頂くしかないのです。このような居住者がいる場合では、相手の生活環境・経済状況等を十分に配慮の上で、理解を得るために丁寧に折衝することになります。

売却などに向けて、誰に相談するべきか…

共有者の間で、売却もしくは土地の分割などに向けた協議が円滑に進まないケースも多いものです。その場合、自分自身で問題解決に向けて取り組むか、誰かに相談するかの判断になります。

基本的には、① 自分自身で共有の相手方と直接交渉をするか ② 共有者以外の親族の誰か、もしくは不動産に詳しい知人・友人に相談するか ③ 共有問題の専門的な不動産業者に相談するか ④ 弁護士さんに相談・委任するかの選択になります。例えば病気の治療をする場合、診療科・担当医の選び方次第で治療方針・結果も異なります。外科手術か放射線治療かを選択するような違いとなりますので相談者選びは重要です。

共有不動産の売却や土地の分割等を業務として行う場合では、本来の問題解決以外に、並行して行う諸々の調整や雑務が多いのです。そのためにも問題全体を掌握して、すべての解決に向けて対処できる中心的実務者が必要になります。幅広い実務経験、土地建物に関する知識や雑学、関連者との調整力の他に、必要に応じて土地家屋調査士や税理士、弁護士さんへの手配や連携、隣接地所有者との境界問題、家屋の解体業者などへの手配や行程管理などにも対処する事があります。
尚、大切な事は、後日になって何らかのトラブルが再発しないように解決する事です。

そのためにも、多角的に対応できる経験豊かな専門的不動産業者(実務者)に依頼するのが得策でしょう。大手系列の仲介販売業者さんの営業さんでは一般的な売買案件を多数抱えていることと、毎月の売上にも追われており、手間暇のかかる売却業務等には不向きの場合が多いものです。尚、共有者間の協議が進まない場合で裁判所に付する場合は、法律のプロである有能な弁護士さん(不動産民事事件に詳しい事が重要です)を探して依頼するのが得策です。

  • ※弊社ホームページコンテンツ「共有不動産の諸問題」「相談相手の選び方」「不動産会社の選び方」などにも関連することを記してありますので合わせてご覧ください。

相続登記が未了の場合の売却について

まずは、相続人同士で遺産分割協議を行い、相続登記を完了することが最優先
です。単独名義もしくは共有名義で相続登記をする場合でも同じです。相記登記の完了で相続人は売却が可能になるのです。相続人が既に亡くなっている場合は、代襲相続人の名義で登記をします。相続人同士の交流が疎遠だった場合や相続人が多人数の場合では、遺産分割協議書の作成が円滑に進まないケースや非協力者が現れることも考えられます。相続登記で多い方法は法定相続による配分の登記です。この登記は、詳細な協議を省いてできる登記方法なので多く採用されております。

但し可能であれば、この時点で 場当たり的な法定相続ではなく(例えば、単純に 子同士が同じ割合で持分登記をする事など)、遺産分割協議で「相続を受ける方」「放棄をしてもよい方」「遺産の配分方法」などの詳細を決めて登記を完了させたいものです。共有者間における金銭等の授受で分割協議を円滑に進めるのです。相続人による納得しての遺産分割は、相続人が複数になりましても後々の親族関係のためには良いことです。

相続登記の手続きは、司法書士さんに依頼することをお勧めします。戸籍謄本などの取寄せなどに手間がかかることが多く、込み入った相続登記では数か月間単位の期間を要することがあります。司法書士さんは、戸籍謄本の他にも必要になる証明書等の取寄せも代行してくださいます。

弊社では、共有問題の解消に取り組んでおります。

弊社では長年の間、共有名義の持分売却(売買)、土地の分割等に取り組んでおりますが、裁判所に付しての解決は可能な限り避けて、穏やかな協議を最優先にしております。それが、すべての共有持分者様にとりまして最善のことと考えるからなのです。共有関連者様のお考えを丁寧に伺い、生活環境・経済環境等を配慮の上で、最適な売買や分割等に向けての業務を行っております。

また、共有の相手様には問題の解決に向けて十分に理解していただくために、分かりやすい言葉で丁寧に説明させて頂き、円満なる解決を念頭に業務を進めております。

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東京・練馬 株式会社 昭和住地 代表 森 進

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